秘書課恋愛白書

そんなに近くで撮る必要ある?

近すぎる距離に突っ込みを入れたくなる。


落ち着け私……妬かない妬かない、これは仕事よ。

私が公私混同してどうするの。


少しだけ書類を持つ手が震えてグシャッと潰した音に気がついた室長が横目で私をチラ見した。


「中原さん、大丈夫?」

「大丈夫です。何にもございません」


仕事中でしょ、そんなの気にしてたらキリがないわ。

だが、私のその反応を見ていたのは室長だけではなかったようで…

社長が微かに口元に弧を描いたのを私は知らなかった。


『ではインタビューは以上になります。お時間を頂きありがとうございました』

「こちらこそ」


…よかった、終わった。

無事にインタビューは終了し、何事もなく終わったことにホッと胸を撫で下ろしたのも束の間のこと。

インタビュアーの女性が急に社長に迫り始めたのだ。


『宮野社長、今日はありがとうございました。ぜひこの後…二人で食事でもいかがですか?』


社長に寄り添い、その豊満な胸を押し付けて誘う姿が視界に入ってきた。


「食事……?」

『雑誌の取材を通して良いところを知ってるんです。ぜひご一緒に…』


なっ………!

社長がそんな誘いにのるわけがないとはわかっているものの、思わず叫びたくなるのをグッと我慢する。
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