秘書課恋愛白書
「んー…そうだな。この後特に用事もないし…別に行ってもいいかな」
『本当ですか?!』
「え……」
嘘でしょ?
隣で喜ぶ女性が社長の腕に絡みつくのを黙って見てることしか私には出来ないのだろうか。
んー、と顎に手を当てて考えるポーズをしてチラリと横目で私を見る社長とバチッと目が合う。
そしてフイッと私から視線を逸らすとインタビュアーの女性と一緒に会議室を出て行こうとするのだ。
……いやいやいやいや。冗談だよね?
本当に行っちゃうの?
それは、仕事として?
それともプライベートとして?
ギリギリと痛む胸を押さえながら、泣きそうになるのを堪えながら黙ってその場に立ち尽すしか他なかった。
社長と女性が私の目の前を通り過ぎようとする…
そこから動けずに俯く私。
止めることも出来ない無力な秘書としての存在。
ただ側に居たいという想いだけじゃ収まらない…とここにきて痛感するとは思わなかった。
二人を見て居られなくてぎゅっ…と目を瞑った。
が、いきなり肩を抱き込まれて引き寄せられて、気づけば私は社長の腕の中にすっぽりと収まって居て…
「んっ…?!」
人前にも関わらず大胆で濃厚なキスをされていた。