秘書課恋愛白書
「僕の秘書ってむしろメリットばっかりじゃない?キミが求めている実績もついてくるし、お給料だって今までと比べ物にならないくらい高いしさ」
「うっ……」
たしかに。
"宮野社長の秘書"を経験した肩書きがあれば私の実績は申し分ないものになるし、お給料もきっと今までの倍は貰えるのだろう。
「どうする?僕の秘書をやるか、やらないか」
「……うゔっ」
「キミの言動一つであの会社をどうにでもできるんだよなー」
「やります。やらせていただきます!」
職権濫用。人畜非道。まさに傲慢。
私一人の言動であの会社を潰すようなマネ、できるわけがないじゃない。
私の良心を利用したやり口がなんとも汚い。
食い気味に返事をした私に社長は満足そうに微笑んだ。
「今日からキミは僕の秘書。
改めてよろしくね?綾女」
「中原とお呼びください!!!」
「呼び方くらい好きにさせてよ」
これからこの自由で傲慢な社長が私の上司だなんて先が思いやられる。
プロ秘書の社訓第三条。
雇い主には一切の恋愛感情を抱いてはいけない。
さっきのキスで一瞬くらりとしたけどあれは遊ばれただけ。
絶対ハマってオチたりしないんだから。
私は私の仕事をこなして昇進を目指すのみ!
そう心に誓った瞬間だった。