秘書課恋愛白書

"タケルくん"と呼ばれた人物は私がくる前から此処で飲んでいたようで私の隣の席へと掛けた。

こないだは急いでいたみたいだし気づかなかったけど、この人もかなり端整な顔立ちをしてらっしゃる。


まじまじと横顔を見つめていると、私の視線に気づいた彼が私の方へ向き直る。



「二度目まして。僕は灰田 たけると申します。先日は友人が大変失礼しました」

「い、いえとんでもないです…。中原 綾女と申します」


深々と頭を下げる彼に逆にこっちが恐縮してしまった。

胸の前で手を振って顔をあげてください、と訴える。

あの宮野社長の友人というわりには、この人はとても常識人だ。


「中原さんですね。ここへはよくいらっしゃるんですか?」

「そうなんです。4年前この辺の会社で仕事をしていて、たまたま寄ったのがきっかけで通うようになりました」

「アヤメちゃんけっこう凄い仕事してるんだよ?」


はいどうぞ、とテーブルを滑り目の前に置かれたピンクのカクテルと同時にマスターも話に加わる。

とりあえず乾杯と言って灰田さんのグラスと軽く乾杯を交わした。

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