秘書課恋愛白書
深く息を吐いて起き上がると前髪を搔き上げる。
寝ている時は暗がりで気づかなかったが、カウンターの照明に照らされて露見したブロンドの髪の毛。
これは染めてない自然なものだろうか。
まじまじと魅入ってしまった。
しかも前髪を掻き上げたことによってこれまた綺麗な顔をしているではないか。
「外国人…?」
「ダブル」
頬杖をついて私の方を見ることなく、しれっと言い返して来た。
心の声が漏れてしまっていたようだ。
「そ、そうですか」
ハーフ、じゃなくてダブルね。
「レイちゃんもっと愛想良くしたらー?」
「なんでわざわざそんなことする必要あるの」
そう言ってマスターから差し出された水一杯をぐっと一気飲みする。
カランと揺れる氷だけがグラスに残った。
なんだろうこの人。
すっごくキゲンが悪い?
「マスター、この人どうしたの?かなり機嫌が悪いようですか?」
「ああ、うーん。彼はレイくん。実はここだけの話ね。ずっと好きだった女の子が親友の幼馴染みと結婚するって荒れてるんだ」