秘書課恋愛白書
「そうだった、アヤメちゃん。僕に仕事の愚痴聞いてくれって言ってたのにごめんね」
マスターは思い出したかのように手をポンと叩いて私のグラスを下げた。
次の注文は?と聞かれたのでもっと思いっきり酔いたい気分になり強めのテキーラを頼む。
「ここは楽しくお酒を飲む場です。好きなだけ愚痴っていただいて構いません。それに僕が関係するなら尚更聞いてみたいですね」
遠慮せずどうぞ、と言って灰田さんは興味津々な様子。
では言わせて貰いますけど?!
胸ポケットから名刺入れを取り出し、一枚引き抜いてそれをテーブルに叩きつけて灰田さんの目の前へと差し出した。
「今週の月曜日からの私勤め先です。どうぞ」
「ありがとうございま………え?」
名刺と私の顔を交互に二度見して目を見開く灰田さん。
気になった様子のマスターもカウンターに身を乗り出し私の名刺を凝視する。
「み、宮野ホールディングスって…タケルくん。ここレイちゃんの……」
「そうです、マスター。いや、でも、まさか…」