秘書課恋愛白書

そう言うと胸ポケットから名刺入れを取り出して私の手のひらにその一枚を差し出した。

なになに、『H &I』って書いてある。

H &Iですと…?

知らないはずがない、日本有数のIT企業だ。

しかもさっきまで一緒にいたマリカの勤め先だったり。



驚きのあまり目を見開いて名刺を持つ手が震える。

そして口をパクパクさせる私に灰田さんはどうかしましたか?と首を傾げる。

代表取締役って、この人も社長!?


「ははは…世の中怖い怖い」

「怜の秘書を降ろされたらぜひ僕のところに来てくださいね」

「いやー…はあ。機会があれば」


類は友を呼ぶというのはこういう時に使うのだろうか。

社長のお友達はやっぱり社長。

だから宮野社長とも幼馴染みで親しいわけだ。

強めのアルコールが効いてきたのかこれ以上考えることを放棄した。



「アヤメちゃん大丈夫?飲みすぎだから一回やめよ?」

「大丈夫です…まだ飲める……ぐう」



言いたい放題、考えることに疲れすぎて、いつもより強めのアルコールが回ってだんだんと眠くなる。

ウトウトとした私はそのままカウンターに突っ伏して目を閉じてしまったのだった。



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