秘書課恋愛白書

どんな顔して彼女に会えばいい?

どんな顔して親友を祝えばいい?

そんなことが頭の中でずっとぐるぐると駆け巡り続ける。

考えたくもない、今この時ばかりは忘れたいのに。

ボロボロの気持ちでカウンターで飲み続けても、変わらない事実に気持ちは沈んでいくばかりでいっそこのまま逃げ出してしまいたかった。

カウンターに突っ伏したまま、気持ちよく寝れるわけもなく。


そんな時だった。

僕の周りでは誰一人飲んではおらず人の気配を近くに感じた。


「こんばんは、マスター。今日は思いっきり甘いのが飲みたいな」


ちょっと離れた隣の席から女性の声。

アヤメちゃん、と呼ばれた女は良いことでもあったのかとても楽しそうにマスターとお喋りをしていた。


お客さんからスーツを仕立ててもらったの、と嬉しそうに話す彼女の声が何故か心地よい。

どんな顔してそんな話をしているんだろうか。

些か興味が湧いてきてきた。

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