秘書課恋愛白書

まじまじと僕を見つめて外国人かなんて聞いてくるもんだから答えてあげた。

マスターから差し出された一杯の水で渇いた喉を潤して少しだけ頭がスッキリしたような気がした。


「マスター、この人どうしたの?かなり機嫌が悪いようですか?」

「ああ、うーん。彼はレイくん。実はここだけの話ね。ずっと好きだった女の子が親友の幼馴染みと結婚するって荒れてるんだ」

「マスター。そんなことこの人に言う必要なくない?」


僕のプライベートなこと喋り過ぎ。

内容を聞いて同情の眼差しを向ける女に少しカチンときた。

見た目は彼女に似てるが、中身は全然違う。

次のお酒を急かし出されたグラスに口をつけた。


「それは飲みたくもなりますよねー」


憐れんだ視線が胸に突き刺さる。

だから、別に同情して欲しいわけじゃないんだけど。

マスターからアヤメちゃん、と紹介された女は僕が知らないうちにここに入り浸るようになっていた常連らしい。

女の常連なんて珍しい、絶対マスター目当てだろうけど。
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