秘書課恋愛白書

「びっくりした…。いえ、すみません。知り合いによく似ていたもので」


どこにでもいる顔なので、とたけるに笑ってみせるアヤメ。

僕の時とは全然態度が違う。


「こいつ嫌な絡み方しませんでした?」


そう言ってアヤメに謝るたけるを横目で見つつ帰り支度を始める。

あーあ、本当に面倒くさい。

こんな時間になんでわざわざ祝わなきゃいけないんだ。

短くため息をついてアヤメを見るとバチッと目が合った。


「またね」


また、すぐにキミは僕と会うことになる。

なんせ僕が自分の権力を奮ってそう仕向けるからね。


はは…っと口元を引きつらせて苦笑いを浮かべるアヤメを残し、マスターと軽く挨拶を交わして僕はたけるとBARを出る。

腕時計に視線を落とすと、気づけば時刻は23時半。

表に出ると、たけるの黒塗りの高級外車が止まっていて渋々助手席に乗り込んだ。


「……怜。正直ビックリしました」

「なにが」


車に乗り込むなりたけるが口を開く。

おおよそアヤメのことだろうけど。
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