秘書課恋愛白書
「なにって…あまりにも出会った時の"彼女"にソックリだったからですよ。貴方もそう思ったから一緒に飲んでいたんでしょ?」
「やめてよ、たまたま僕の隣の席に座ってきたんだ」
エンジンをかけてシートベルトに手をかけるたける。
そう、アヤメはたまたま、偶然僕の隣に座った。
「そうかもしれませんが…いやービックリした。しかも彼女以外の女性とあんなに話してる貴方を久しぶりに見ました」
「そう」
「いいことだと思いますよ」
たけるは知っている、僕がずっと彼女に想いを寄せていたことを。
だからそれに踏ん切りつくような出来事に、たけるなりに喜んでいるのであろう。
エンジンを蒸かせて発車する車。
窓から遠くに見えるネオン街がキラキラとしていた。
「確かに見た目は似ていたよ。でも中身は全然違う」
「そりゃそうですよ。でも、楽しそうでした」
運転しながらクスリと笑ったたけるを横目になんとも言えない気持ちになる。
たしかに、あんなに酒を浴びるように飲んで沈んでいたのが嘘みたいに少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
それはアヤメと話したからなのか。