秘書課恋愛白書

なんて悠長に考えていると、女性社員は慌てて起き上がりカーペットに散らばったジャケットとスカートを持って走り去っていった。


部屋に取り残された僕とアヤメ。

さあ、キミはどんな反応をする?

不潔だと僕を罵り罵倒するだろうか。

それとも人のプライベートなところを目の当たりにして羞恥に顔を赤く染めるだろうか。


だが、思った反応とは違い、冷静な声で自己紹介の挨拶をする。

ああ、多分まだ僕に気づいてない。


「知ってるよ。キミ凄いんだってね」

「とんでもないです」

「だから興味が湧いたんだ」


さあ、綾女。

キミの目に僕はどんな風に映るんだろうか。

振り返ると、綾女は開いた口が塞がらない様子。

なんの冗談、と言葉を震わせる。

ほら、やっぱり期待通りの良い反応をしてくれる。


後ずさりする綾女を壁際に追い込む。

呆然と立ち尽くす綾女は今の状況を理解するのに必死なご様子。

掴んだ腕を引き寄せ背中に腕を回し、綾女を抱き寄せた。



「ハジメマシテ。宮野ホールディングス代表取締役社長、宮野 怜(レイ)今日からキミの上司。よろしく」

「はぁああああああああ?!」


ちゅっ、とわざとリップ音を聞かせるように頬に口付けた。
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