秘書課恋愛白書
苦しさで現界を迎え社長の胸元をぐっと手で押すと社長の動きはぴたりと止まってすんなりと解放された。
「ハイ、終わり」
「…………けほっ」
息苦しさから解放されて咳き込む私の頭をポンポンと撫でた。
そして最後までして欲しかった?と社長はフッと意地悪な笑みを浮かべる。
言われた意味を理解したところであまりの恥ずかしさに顔から火が噴き出しそうだった。
飲み物でも取ってくるよ、と社長は何事もなかったかのように部屋を出て行った。
その後ろ姿を睨みつけるしか他ない。
ヘンなの……
流れでそのまま最後までしてしまうのかと思った。
熱を帯びた体は冷めなくて、まだ小刻みに震える手。
もしあのまま続けていたら、私はどうなってしまったんだろう。
一瞬でもこのまま社長に抱かれてもいいかな、なんて馬鹿なこと考えてしまった自分に驚きを隠せない。
ここが社長の部屋だとわかってしまい落ち着かない。
とりあえず着替えたくて、自分の服を探す。
ベッドから降りて広い寝室を見回すと綺麗に畳まれたスーツがPCデスクの椅子に置かれているのを発見する。
「…わざわざクリーニング出してくれたんだ」
そういう優しさを持ち合わせていたとは。
意外な一面に驚く。
社長が戻ってくる前に、と思って着替えて軽くメイクをしていると、ふとPCの画面に隠れた写真立てを見つけた。
好奇心でその写真立てを手に取る。
「あ!灰田さんだ……と、誰だろう」