秘書課恋愛白書
私、社長の前でゲロったんですか。
昨日だけでいくつやらかしてるんだ。
申し訳なさで顔を上げられないまま差し出されたミネラルウォーターのボトルを受け取る。
「貸し、一個ね」
「か、貸しですか……」
何で返してもらおうかな、としれっと言い放つもんだからサッと血の気が引いた。
「酔っ払って覚えてないだろうけど…脱がせようにも大事なスーツだから嫌だってゴネたんだよね」
「あっはは…そうですね、大事なスーツです」
そんな醜態まで晒してたのか、酔っ払いめ。
もうこれ以上何を言われても驚かない気がする。
へぇー、と社長は私の近くに寄ってスーツの襟に手をかけた。
「ふーん。これオーダーメイドでしょ?けっこう高いと思うけど奮発して買った?」
「いえ。社長の前にお世話になった雇い主にプレゼントしてもらったんです!」
自分でこんな上等なスーツ買えるわけないでしょ。
もっと見てと自慢気に話す私にピクリと眉を動かした。
「……は?なにそれ」
「この体のラインとか綺麗で布も肌触りが良いしさすがイタリア製生地を使ってるなって………」