秘書課恋愛白書
スーツ買いに行くってなんなんだ。
「どういうこ……「ついたよ」」
聞き返したと同時に車は停止して、社長は私の制止も聞かずに降りていく。
この人はなんて自由で勝手なんだ!
待って、と社長から離れないように慌てて外に出た。
駐車場から歩いて徒歩5分。
老舗のデパートに足を踏み入れた社長と私。
土曜日の昼下がり、多くの人で賑わうデパートに来るのはいつぶりだろうか。
社長が店内に入ったと同時にスーツ姿の50代くらいの男の人が血相を変えてバタバタとこちらへ走ってきた。
金色に光ったバッジを胸元にしている。
あ、知ってる…これかなり上客を相手にする人たちがしてる外商部のものだ。
「宮野様いらっしゃいませ!お待ち申し上げておりました」
「さっき電話した通りだからよろしく」
「かしこまりました」
いわゆる社長はお得意様ってやつなのね。
スーツの男の人は社長にペコペコ頭を下げている。
私と家を出る前に電話してたのは見てたけど、かけていた先はここだったの?