秘書課恋愛白書
「そ、そうですか……」
マスターがそこまで言うなら…
私は胸元の内ポケットから名刺入れを取り出してその一枚を抜き取るとテーブルに置いてそっと彼の方へと滑らせた。
「……ハケンヒショ?」
「そ、派遣秘書。他社に依頼を受けて出向して秘書を必要としている上司についてサポートする秘書業務をしてます」
「ふーん。秘書ねぇ…」
私の名前をまじまじと見つめて何かを考え込む。
なによ。悪い?
「で、あなたは───…」
私が彼の素性に迫ろうとした時だった。
ドンドンと階段を駆け下りる音がして、その音は次第に大きくなりこちらへと近づいてくる。
「いたいた!やっぱりここだった。探しましたよレイ」
「たけるか…あーあ見つかっちゃった」
誰?彼の知り合い?
振り返ると、少し額に汗をかいて息遣いを荒げる男の人が立っていた。