秘書課恋愛白書
こんなところでっ…
我に返り自分たちがいま居る場所を思い出し余計恥ずかしさが押し寄せた。
コンコンッと扉がノックされて社長を押し飛ばす。
離れたところで会計を終えた店員さんが戻ってきてブラックカードを社長へと返すのを横目で見た。
赤くなった顔を早く収めようと手で風を仰ぐ。
そして乱れたスーツを直し、気になる首元を隠すようにフリルを寄せた。
店員さんも、一言言ってくれればいいのに。
確かに着てきたシャツを脱いだ時、一瞬その場にいた全員に変な空気が流れたのは感じたけどこういうことだったのね…
はぁ、と深くため息をついてフリルの部分をぎゅっと握りしめた。
「………。ここで大丈夫です。ありがとうございました」
「どーいたしまして」
本当にスーツを買うためだけにデパートに連れていかれ、時間が経つのは早いもので気づけば夕方となっていた。
家の外観を社長に見られるのはちょっと…と試行錯誤した末送ってもらったのは家から徒歩5分圏内の公園前。
「家まで送るのに」
「こんなスポーツカーでうちの前停まったら近所の噂になるので大丈夫です」
あっそ、と社長は少し不服そうな顔をしてサングラスをかけ直す。