先輩、好きです。

しかし、ワクワクしながら向けた視線の先には片手で顔を覆っている先輩がいた。


「……」


「先輩？どうかしたんですか…？」


「合宿の、リーダー…」


いつも優しい雰囲気を醸し出している先輩がこんなにも深刻そうな顔をしているってことは、このリーダーとやらはそんなにやばいものなのか…！？


「いいか、笹野…」


「はい…」


「昨年リーダーをやった植田は、疲労のあまり3日間寝込んだんだ…」


先輩の只者ではない空気に乗じて、私もつばをごくっと飲む。


「合宿のリーダーって、そんなに大変何ですか…？」


先輩の様子が伝染したかのように、私の背中にも冷や汗がすーっと流れた。


「いや。リーダー自体はそんなに大変な仕事じゃないんだ。まぁ、責任はあるけどな」


「じゃあ、何がそんなに深刻なんですか…？」



「この合宿は陸上部の誰もが通る夏の強化合宿なんだ。練習の内容は1日目にして全員が全身激しい筋肉痛になるほどの過酷さ…」