先輩、好きです。

朝の清らかな風が2人の間に吹き抜ける。


「だから渚のこと、応援できない。ずっと…、ずっと好きだったの。小さい頃、颯斗に誘われて陸上を始めて、高校まで付いて来ちゃってさ」


「…」


「だから、ここでけじめつけようと思って。今度の大会で全国を掴めたら、告白する。そう決めたの」


真っ直ぐな瞳。


思いの込められた力強い言葉。


全部が伝わってきた。


先輩がこの大会にどれだけの思いで望んでいるのか。


私の心に訴えかけてきた。


…でも、


「負けません」


私だって本気なんだ。


この思いは貫き通す。


そう、自分の中で決めたんだ。


「…負けたく、ないです。私も生半可な気持ちで先輩のこと好きなんじゃないです。全国行けたら…、ううん。全国行って先輩に想いを伝えます」


自分の伝えたいことは全て言えた。


悔いはない。そう思った。


これは先輩への宣戦布告。


私たちは先輩後輩だけど、ライバルなんだ。


「渚の思い、伝わったよ」


そう言った先輩の手は胸に当てられていた。


「一個だけ付け足し。もし私が行けなかったら、その時はあいつのこと諦める」


「先輩…」


「だから、正々堂々戦おう渚。私たちはライバルよ」


その時、ふと以前梓に言われたことを思い出した。


…ありがとう梓。


梓の言ってたこと、あたってたよ。


自分の胸の内に温かい気持ちが広がるのと同時に、新たな決意が生まれた。


「はい!私も本気で挑みます」

















それからの日々はあっという間に過ぎていった。


残りの2週間、先輩も私も陸上に没頭した。


走って走って走って、その先にあるものを追いかけた。


先輩の背中に追いつきたくて、がむしゃらに走った。


朝も夜も頭の中は走ることでいっぱいで、梓もたくさん練習に付き合ってくれた。





…そして、


大会当日を迎える。


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