先輩、好きです。
会場に着いた私たちは素早く準備を済ませ、ウォーミングアップに入る。


「渚、調子どう?」


「バッチリ!今日は10時間寝てきた!」


梓にグーサインを見せながらそう言う。


梓と私は午前中の後半の滑走だから、まだ少し時間がある。


たしか近藤先輩は3種目目だったはずだ。


アップがある程度終わると、先生から全体への指示があった後、各種目ごとに分かれてミーティングが開かれた。


「とりあえず、落ち着いていこう。俺たちは本番で100%の力を出せるように、120%の練習をしてきたんだ。だからみんな頑張ろう」


「「はい!」」


短距離のまとめ役である近藤先輩がそう言うと、自然と私たちも背中を押されているようだった。











それから順番に種目が行われていき、近藤先輩も順調に予選を勝ち抜いていった。


男子の予選が終われば、女子の予選も始まる。


私と京果先輩は100メートルで、先輩が1組、私は3組だ。


先輩と私が当たるとすれば、おそらく決勝。


それまで、絶対に負けられない。


大きく深呼吸をして、心を落ち着かせる。


まずは予選だ。


いつも通りやれば絶対大丈夫。


自分の努力を信じろ!


「よしっ!」


それから少しして、女子100メートルの予選が始まった。


レーンに立つ前こそ体が若干強張ったが、自分のレーンに入ってからは心も思考も落ち着いていた。


そして、これまでの練習の成果が垣間見えたのか、予選はお互いに3位以内で通過することができた。



「…」


予選を終えて、自分の体がいつもよりも良く動くことに気づいた。


走っていて風に乗っている感覚があった。


強く拳を握りしめ、この感覚を忘れないようにする。


1種目を挟んだあと、すぐに行われる準決勝は全部で3組。


その各組の上位2人とそこにはいれなかった人たちの中から記録の早い上位2人が準決勝で争う。


私と先輩は違う組に割り当てられた。


先輩の方が先に滑走順が回ってくる。

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