先輩、好きです。
それでも、なんとかこの痛みを抑えようと、
お腹をさすりながら目をつむり、深く呼吸する。


『…すー、はぁ。…すー、はぁ』


大丈夫。平常心、平常心。


さすっているもう片方の手を強く握り、胸の前でトントンと自分にいいきかせる。


それを何回か繰り返していると、競技場の建物についているスピーカーから連絡をするためのメロディが流れた。


『短距離走に出場の選手は、招集場所へ集まってください。…繰り返します。短距離走に…』


その知らせを聞いた瞬間、体が強張った。


でも、行かなきゃ…。


自分の手から伝わってくるはずの熱が、どんどん冷たくなっていっているを感じながら、私は足をトラックへと向けた。


血の気が引くような思いでトラックの目の前まで来た。


そして、トラックに足を踏み出そうとしたその時。


『颯斗がんばれぇー!!』


『行けー!颯斗ーー!』


ちょうど私がいる真上の応援席から、声が枯れるんじゃないかって思うほどの声援が私の耳に響いた。

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