泡の夢~きっとまたわたしを見つけて~
海は嫌いだった。
何故嫌いなのか明確な理由はなかったけれど、どうしても好きにはなれなかった。

嫌な思い出があった記憶は今の俺にはない。

子どもの頃に何かあったのかと以前両親に聞いたこともあったが、夏休みに行く程度だったし溺れたこともなかったし、その頃から海が好きではなくパラソルの下で遊ぶことしかしていなかったらしい。


それなのに、おかしかった。

その日は何かに駆り立てられるように車を走らせていた。

好きになれない海に。



どうして今日なのか。
どうして突然、ひとりきりで、こんなに寒い冬に海に行きたくなったのか。

分からないまま海へ走っていた。




月も出ていない。
広い砂浜に、やたらと存在感を示す青すぎるこの海。

静かに砂浜を歩いていた。

マフラーくらい巻いてくるんだった、なんて後悔しながら。
< 6 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop