泡の夢~きっとまたわたしを見つけて~
かじかむ手をポケットに突っ込んでごまかして、息をするたびに白くなるそれにまた寒さを感じた。


この海へは、子どもの頃にも来ていたかな?と考えていたその時、暗闇のなか海へ近づく人影を見つけた。


目を凝らすと、モスグリーンのワンピース姿でコートも着ていない女の人のように見える。

柔らかそうな長い髪が風にさらさらと揺れていた。


自殺か。
すぐにわかった。


冷たい人間だと思われるかもしれないけれど、どうでもよかった。
死にたければ死ねばいいと思うし、俺が関わることでもない。

もともと他人への関心も低い俺が、自殺しようとする人間を思い止まらせよう、だとかいう気はさらさらなかった。


はずなのに、


ーーーーぴちゃ。



彼女が片足を海へ入れた瞬間だった。
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