一匹狼くん、拾いました。
メイドが去ったところで、緋也は遠慮がちに口を開いた。
「ハー。……ごめん。僕らしくないな、客がいる時に騒ぐなんて。さっきの通り、あのメイドは過剰に僕の世話を焼くからね、ちょっと苦労してるんだ」
ため息吐いて、緋也は顔を俯かせた。
「……別にいい。あの、緋也……親が死んだって?」
「誰にも話さないって誓う?華龍に話したりでもしたら、君の父親殺すよ?」
緋也は、俺を睨みつけて言った。
「話さねぇよ」
「じゃあ、もう手当終わったから、パーカーに着替えて。
メイドが食事を持ってきたら、話してあげる」
得意げに笑う緋也の口の中で、特徴的な真っ白い八重歯がキラキラと光を発していた。