一匹狼くん、拾いました。
建前。
コンコン
「……旦那様、お食事です」
部屋をノックして現れたのは、メイドではなく執事だった。
執事はワゴンをひいて部屋に入ってきて、長テーブルの上に、紅茶とご飯を置いていった。
「……魁人(カイト)。汐美(シオミ)は?」
「汐美でしたら、デザートをお作りになっていると思います。
……すみません、また旦那様の機嫌を損ねたようで。しっかりしつけておきますね」
汐美っていうのは、恐らくさっきのメイドのことだろう。
「……うん、そうだね。よろしく頼むよ」
「はい。俊平様、どうぞごくつろぎ下さい」
緋也が笑いかけると、魁人は口元を綻ばせて返事をした。
次に俺が頷くと、魁人はお辞儀をしてから静かに部屋を去っていった。