一匹狼くん、拾いました。
ドアを魁人(カイト)が閉めたのを確認してから、
緋也はテーブルにあった紅茶を一口飲んだ。
緋也はソファの上で足を組んで、隣にいた俺に笑いかけた。
嘘っぽいような冷たい笑みだった。
「…………5歳の時に、親が死んだんだ。
僕の両親は、Juliet(ジュリエット)っていう宝石店を経営していてね、父親はその会社の社長で、母親は副社長をしていた。
…………大富豪がよく舞踏会とかで指輪やネックレスを付けて着飾る時に利用するような店でね、それはそれは繁盛していたんだ。
だからなのか知らないけど、僕の両親は、一歳の時から家には夜遅くにしか帰ってこなかった。朝起きたら既に仕事に行っていて、いつも家にいるのはメイドの汐美と執事の魁人だけだった」
手に持っていたオレンジ色の夕日のように淡く綺麗な紅茶を見つめ、緋也は淡々と話をした。