一匹狼くん、拾いました。
「……ば魁人、早くミカのところに行きなよ。お風呂入れてあげないと」
僕はほんの微かに赤くなった頬を隠すように下を向いた。
「ええ、そうですね。では汐美に俊平様をお風呂まで案内するように連絡しておきます」
執事服の胸ポケットから携帯を取り出して、魁人は汐美に片手でメールを打った。
もう片方の手は、僕の身体を抱きしめたままだった。
「魁人」
180ほどの身長がある魁人を、僕は下から見上げた。
「はい、旦那様」
「……僕はさっき君にミカを風呂まで案内しろと言ったんだけど?」
僕は魁人を睨みつけた。
「……申し訳ありません。私には、俊平様の案内よりも遥かに重要な用事がありますので」
「ふーん?それは何?」
僕は魁人を見上げたまま、不思議そうに首をかしげた。
「……旦那様を元気にすることでございます」
魁人は、もう一度僕の頭を撫でた。