一匹狼くん、拾いました。
口を尖らせてそう告げた後、緋也は背中にかけられていたコートを魁人に投げ、スタスタと俺を置いて部屋に向かって歩き始めた。
「緋也……」
お前って、案外良い奴じゃん。
「何ぼーっとしてんの。さっさと隣来ないと、先行って部屋の鍵閉めるよ」
放心状態になっていた俺の方に振り向いて、緋也は腕を組んで言い放った。
「なっ、わっーたよ!」
俺は、慌てて緋也の隣へ走った。
前言撤回。
やっぱ、こいつすげぇ性格悪い。
……でも、俺は嫌いじゃないかも。
「緋也!」
俺は、声を上げて名前を呼んだ。
「何」
「ありがとな!!」
そういうと、緋也は顔をリンゴみたいに紅くして、俺からすぐに目を逸らした。