一匹狼くん、拾いました。
誰かの声が、俺を深い眠りから現実へ引き戻した。
「緋……也……」
掠れた声で、俺は引き戻した男の名前を呼んだ。
それは、緋也だった。
「大丈夫かい?
顔、真っ青だよ……?」
黒く妖艶に輝いた緋也の瞳が、俺の瞳をしっかりと捉えていた。
緋也は、布団にくるまっていた俺の額に手をあてた。
「どうやら熱がある……訳では無いみたいだね」
「……ミカ?」
緋也は、戸惑いの声を漏らした。
気がつけば、俺は緋也が額から離そうとした腕の手首を、ぎゅっと両手で握りしめていた。