一匹狼くん、拾いました。
“ミカー!”
岳斗……。
頭に、親友が俺を呼んだ姿がよぎった。
すぐさま、俺はそれを首を振って振り払う。
「ミカ、どうした?」
「……何でもねぇ。結賀、俺のバイクは?」
わざと話題を切り替えた。
「あー仁の家の駐輪場に停めてある。ここから一番近いから」
「血流になんかされてなかったか?」
「あぁ、大方問題ないと思うぞ」
うんうんと頷きながら、結賀は言う。
俺はそれを聞き、思わず気が抜けた。
「鍵、お前が脱いだ俺のコートのポケットに入ってるぞ」
慌てて後ろに振り向いて、結賀のコートのポケットを探って鍵をとる。
「ん、……借りっぱなしで悪かったな」
俺はそのままコートを結賀に返した。
「おー。ミカ、お前今日からここにずっといろよ?そんでもって、風邪が治ったら怪我が治るまで仁の家に泊まれ」
「……なんで」
「風邪のあいだは流石に逃げないと思うけど、治ったら、普通に家帰らせたら、そのまま二度と来なそうだから」
結賀はそうこともなげに答える。
俺の心中バレバレかよ……。
実際、逃げる気はあった。
「ああもう、わかったわかった。……好きにしてくれ」