一匹狼くん、拾いました。
仁は俺に続いてバイクを降りると、すぐにマンションの階段に向かった。
俺は慌てて仁を追った。
仁は2階の左端にある208号室に着くと、持っていた鞄のポケットから鍵を取り出して、ドアを開けた。
仁はそのまま靴を脱いで、部屋に足を踏み入れる。
「……お邪魔します」
俺は仁の後を追って部屋に入り、小声で言った。
誰かの家に入るのなんて、初めてだ。
ましてや一応同級生で同じクラスにいる男の家に入る機会があろうとは、想像もしてこなかった。
俺が一度手を上げたからかもしんないけど、無理に詮索してこないし、落ち着いた雰囲気だから。
繰り返したくないのに、俺はそんな理由で、仁の手を取ってしまった。
廉のチャラさは岳斗が頭に浮かんでくるし、
伊織は女だからどうしても楓や母親が目に浮かぶ。
結賀はまだマシだけど……あいつは無駄にお節介ばっか焼くから嫌だ。
どうせ、仁がさっき俺の電話を聞いてたのも、結賀の指示なんだろう。