一匹狼くん、拾いました。
「……俊平様」
駐車場にいくと、俺のバイクの目の前に、執事服を着た男がいた。
「……露麻(ロマ)。なんで、お前がここに」
そいつは、親父の命令で背中を押して、楓を交通事故に合わせた張本人だった。
黒い髪に、シワ一つない執事服を着て、
俺に事務的に笑いかける。
「……すみません、俊平様にお伝えしたいことがあったので、ここで待っていました。
……俊平様、旦那様から伝言です。“近々家に戻るから、帰ってこい。俺の商品、俊平。沢山可愛がってやるよ”とのことです」
それ、もはや虐待再開の宣言だよな。
またあの地獄に戻らなきゃいけないのか……。
「……俺が帰りたくないって言ったら?」
「もちろん、無理矢理帰らせます」
露麻………。
「……お前は、俺に同情とかしないのかよ」
「……すみません、私は旦那様の命令が全てですので。俊平様を気の毒には思いますが、私にはどうすることもできませんし、したくもありません。一週間後、主人はアメリカから戻って来られます。その日までには家に戻ってください、俊平様。では、失礼致します。また一週間後に」
絶望した俺を置いて、露麻は足早に去っていった。