一匹狼くん、拾いました。
ここから俺が飛び降りたら、あの親父はどうなるんだろう。
ふと、そんなことを思った。
モデルの俺がいなくなって、画家でいることができなくなるのかなぁ……。
それ悪くないな。
俺が死んだら、親父の人生めちゃくちゃになるのかな……。
だったら別に、楓や岳斗のところにも行けるし、悪くない選択なんじゃないか?
どうせこんな状況じゃ、どんなに欲しくても生きる意味なんて見つからないんだし、今すぐにでも死ねばいい……。
屋上の端に、足をかける。
ここから落ちさえすれば、地獄から抜け出せる……。
「バカっ!!!」
仁が屋上のドアを開けて、中に入ってきた。
驚いた俺は足を踏み外して、地面に真っ逆さまに落ちそうになった。
しかし、俺の腕を仁が掴んで、それを阻止した。
「……仁」
「このバカが!勝手に死のうとしてんじゃねぇよ!!」
仁の必死な形相が岳斗と被って、俺は思わずドキリと心臓を抉られる感覚に陥った。