嘘つきピエロは息をしていない
「いっちゃん……!」
きりの肩を抱き寄せる、一色。
「このくらい照れることないだろ?」
「ビックリしたんだよ。いつもこういうことしないから」
――いろづき始めた俺の世界が
「放課後迎えにくる」
「いいよいいよ!」
「遠慮すんな」
「……ぶ、部室に直接行くから!」
「テスト期間中」
「あっ、そうだった」
「図書室で待ち合わせしようか」
「そうする!」
「合流したあとは――、俺の家来れば?」
――途端に、色を無くした。
「教えてくれるの……? 勉強」
「そうだな。見てやる」
「ありがとう!」
「じゃあ、頑張って」
吉川の頭をそっと撫でる一色。
そんな一色に笑顔をふりまく、きり。
吉川が笑っている姿なんて幾度となく見てきたはずなのに。
その笑顔が一色に向けられていることが嫌でたまらない。
去り際に一瞬俺に視線を向けた一色が勝ち誇るような顔をしていたように見えたのは、俺の行き場のない想いがみせた幻覚だろうか。
俺はいくら吉川が必要でも欲しいなんて言えない。
言っちゃいけない。
俺は、普通の恋ができない。
……ああ、俺、吉川が好きなのか。