嘘つきピエロは息をしていない
「……あ」

 A組の、丸眼鏡くん。

 すごく地味なのが逆にインパクトあって目を奪われてしまった人。

 これはもしや名脇役の素質あるんじゃ……?

 いや、でも、大きな声出せないかな。

 しかし話さなくても表現できるものってある。

 うん。

 この丸眼鏡くんに一度話を聞いてもらうのはアリかも、と思えてきた。

 というか、なぜこんなところで倒れているの?

 ……寝ているだけ、だよね?

 心配になって顔を覗き込んだ、そのとき。

「わっ」

 ――突然ブワッと強い風が吹いた。

「スカートがっ……、んん?」

 私のスカートがまくれ上がったと同時に、丸眼鏡くんの前髪も、流れるように浮かび上がり。

(あれ……? あれれ?)

 眼鏡の下が、覗いてみたくなった。

 ただ、衝動的に。

「勝手に……ごめんなさいっ」

 丸眼鏡を、そっと、外してみると――。

 フサフサの、長い睫毛。

 整った眉。

 薄い唇まですっと通った鼻梁。

 小さな顔。

 重い前髪と分厚い丸眼鏡の奥に隠されていたのは、色白で儚げな、生粋の美少年だった。
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