嘘つきピエロは息をしていない
――間違えた
俺は、弱音を吐くキャラじゃない。
「俺っていうよりは。悩みのない人なんていないと思うよ」
「そうだね。西条くんは大きなお仕事してる分、立場的に誰にも言えない悩みとかありそうだね」
やめろ。
同情の目を、向けるな。
「聞いたことあるよ。えっと、専属モデルの話。契約したとか、してないとか」
「ああ。あれは。正直、荷が重いかな」
隠していた本音を一度吐いてしまうと、止まらないらしい。
「え……それじゃあ断るの?」
「いいや。断るなんて選択肢はない。こんな勿体無いくらいの話を自ら水に流せばもうその世界には居場所なんてなくなるからね。喜んでお引き受け致しますって返事してある」
「表紙飾ったりすることもある?」
「人気次第では、あるんじゃないかな」
「すごい! 西条くんが表紙の雑誌、絶対売れるね!」
「そうかな」
「うん。頑張ってね!!」
ファンだとか、応援するだとか。
そんな感情ほんの一時的なものにすぎないし。
頑張れなんて言葉、言うだけならいくらでも言える。
どうせすぐいなくなるんだろう?
誰にでもそんなこと言うんだろう?
「ねえ、西条くん」
「ん?」
「結構学校から離れてくけど道これで合ってる?」
「ああ。うん、合ってるよ」
「そっか。それならよかった。ああ、緊張してきた」
「緊張なんてしなくていいよ」
「初めてなんだよね」
「……初めて?」
「家族みたいに仲のいい人の家しか行ったことなくて。友達の家、初めて!」
――友達じゃない。