嘘つきピエロは息をしていない
放課後。
明らかに俺の数メートル後方から、ピタリと俺に合わせて歩いているヤツがいる。
同じ道を行ったり来たりしているのにその音が消えることがないのは、怪しい。
歩行音から履いているのは運動靴でなく、おそらく高校生になり買ってもらったばかりのローファー(サイズ合ってんのか? 歩き辛そうだな)で、俺が早歩きにスピードを変えたところであっちは小走りになった。
ということは、きっと、背の低い女。
……まさかアイツか?
一番に思い浮かんだのは、俺の平穏な高校生活を脅かすかもしれない、あの高校で俺の素顔を見た唯一の女。
――勘弁してくれ
舌打ちをしたあと、駅前のアーケードをくぐった。その理由はひとつ。
この商店街は入り組んでいて、姿をくらませるのにはちょうどいいからだ。
わりぃな。
名前も知らねぇトロい女。
お前が俺を尾行しようなんて考えたのが運の尽きだ。
俺はこういの慣れてんだよ。
しばらく歩いたあと振り返り、四方を確認するも、人影ひとつない。
足音もやんだ。
俺を見失ったようだ。
「百年はえーっつーの」
さてと。
撒けたことだし、帰るか――
「ほ、ほんとに、こっちですか?」
「間違いないって。俺ら見たから」
……んだよ、今の。