嘘つきピエロは息をしていない
記憶が蘇る。たしかあの男はこう言っていた。
『あの頃はイヤイヤ稽古してたってのに』
「習い事……」
ふと、吉川と校舎を歩いていたときに、内貴が女子と話し込んでいたことを思い出す。
あの子は空手部のマネージャーだ。
もし、確証をもって内貴に近づいていたとすれば。
パズルのピースをはめていくように、次々と、ある考えに近づいていく。
――内貴が、“マックス”……?
周りから“ウチキ”なんてイジられる陰キャで。
光なんて浴びることなさそうなアイツが。
俺の前で高嶋に蹴りをくらわせたのか?
どうして助けに来たかなんて考えなくてもわかる。
得体の知れない相手がいるかも知れない場所に丸腰で向かってきたのは、自分の力を誇張していたわけではない。
『知るか。吉川の悲しむことすんなって言ってんだ』