嘘つきピエロは息をしていない
「ありがとう」
そう囁くと
「戻るよ。あんまり長居したらお邪魔みたいだし」
いっちゃんが背を向けて立ち上がる。
「えっ!! 邪魔なんてそんなこと――」
「いいか内貴。今度きりのことあんな風に傷つけでもしたら許さないから」
「約束するよ。幸せにする」
「……そうか」
「なあ、一色。お前は吉川と強い絆で結ばれてる。それは揺るぎない事実だ。嫉妬してもしきれねえくらいにな」
ナイキくんがそういったあと、いっちゃんの背中が泣いているみたいに見えた。
だけど、
「生意気なんだよお前」
振り返ったいっちゃんは、とびきり優しく笑っていた。
それを見て思った。
嘘つきなピエロは、もういない。
【完】