嘘つきピエロは息をしていない
一
どうしてナイキくんは偽名を使ったんだろう。
度の入っていない眼鏡をかけて顔を隠している意味も未だにわからず終いなわけで。
「――吉川」
「隠さずに堂々としているべきじゃ?」
美しく生まれてきたことを隠す理由とは?
まさか女の子からモテるのが嫌なのかな。
だとしたら贅沢な悩みだが、私のことをストーカーと勘違いして逃げていたし、嫌な目にあったりしたのかもしれない。
ワケを聞いたら教えてくれるだろうか。
ああ、でも
『プライベート詮索するな』
って怒られそう。
眉間にシワを寄せた王子様の顔が浮かんでプッと噴きそうになった。
あんなに不機嫌の似合う美しい人がいるなんて面白い。
「吉川。それが、お前の答えか」
――へ?
「俺に……そう言いたいのか?」
やばい。
今、授業中だった。
それも、よりによって、ヅラ疑惑のある沢村先生の!
「つまり、俺の……」
教卓からこっちをギロリと睨む先生。
違います違います。勘違いです!
「今のはですね。ちょっと考えごとをしてまして」
「ほう。考えごとを」
「神に誓って髪のことじゃないです!」
そう言った瞬間、どっと教室が湧いた。
「吉川、地雷踏むなよー」
「神と髪。韻まで踏んでんの」
あちこちでクスクス笑い声が聞こえている。
どうしてナイキくんは偽名を使ったんだろう。
度の入っていない眼鏡をかけて顔を隠している意味も未だにわからず終いなわけで。
「――吉川」
「隠さずに堂々としているべきじゃ?」
美しく生まれてきたことを隠す理由とは?
まさか女の子からモテるのが嫌なのかな。
だとしたら贅沢な悩みだが、私のことをストーカーと勘違いして逃げていたし、嫌な目にあったりしたのかもしれない。
ワケを聞いたら教えてくれるだろうか。
ああ、でも
『プライベート詮索するな』
って怒られそう。
眉間にシワを寄せた王子様の顔が浮かんでプッと噴きそうになった。
あんなに不機嫌の似合う美しい人がいるなんて面白い。
「吉川。それが、お前の答えか」
――へ?
「俺に……そう言いたいのか?」
やばい。
今、授業中だった。
それも、よりによって、ヅラ疑惑のある沢村先生の!
「つまり、俺の……」
教卓からこっちをギロリと睨む先生。
違います違います。勘違いです!
「今のはですね。ちょっと考えごとをしてまして」
「ほう。考えごとを」
「神に誓って髪のことじゃないです!」
そう言った瞬間、どっと教室が湧いた。
「吉川、地雷踏むなよー」
「神と髪。韻まで踏んでんの」
あちこちでクスクス笑い声が聞こえている。