嘘つきピエロは息をしていない
「随分と余裕だな? テスト範囲だぞ」
「す、すみません!」
テストと聞いてハッとする。
テスト一週間前から終わるまでのテスト期間中は、一切の部活動が禁止になる。
勧誘もダメかも。
「次、ボーっとしてたら廊下に立たす」
「はいっ」
先生がわたしの後ろの席の子を当てて、その子が問題に正解した。
その問題の答えを私はいくら考えても導けないし、答えを聞いたところで理解できない。
いっちゃんを追いかけてなんとか入学できたものの、正直なところ授業に遅れをとっている。
進学率100%のこの高校では一年から受験を意識している生徒は少なくない。
周りが偏差値の高い大学に進学しようと意気込んでいる中、同じ選択ができない私。
この三年間で進みたい道が見つかるといいなー、なんてやんわり考えているがそれはマイペースのようで。
担任の先生からは志望大学や学科をはやめに決めるよう催促されている。
これは来年には文系と理系で完全にクラスが別れてしまう為だ。
ふと窓の外に目をやるとナイキくんが歩いているのが見えた。
テニスラケットを手に持ち、コートへ向かっている。
私を助けてくれたときの軽快な蹴りを見る限りでは、運動神経すごく良さそう。
でも丸眼鏡をかけているうちは目立つ動きはとりそうにないかも――
「吉川」
しまった。
いつの間にか沢村先生が隣まで来ていた。
今にも沸騰しそうな顔をしている。
「廊下」