嘘つきピエロは息をしていない

 ――通称、“たもっちゃん”

「なにやってんの、そんなとこで」
「ちょっとやらかして。追い出されました」
「廊下でバケツとは。昭和か」

 サラサラの黒髪、長身、そしてリア充オーラがぷんぷん漂う保先生(年齢不詳)は演劇部の顧問だ。

「考えごと、してたんです」
「誰怒らせたんだ?」
「沢村……先生」
「ヅラのことにでも触れたか?」
「え」

 ぶはっと噴き出したあと、

「学業をおろそかにするなよ? JK」

 決め台詞を言われたが、先生らしくない先生に学生の本分はどうみたいな話をされてもしっくりこない。

「ところで吉川。お前だったら何貰ったら嬉しい?」
「え?」
「プレゼントだよ、プレゼント」

 もしや女性になにか贈るのかな。

「気持ちの問題ですかね。モノはなんでも嬉しいですし、モノじゃなくても嬉しいです」
「若いねぇ」
「っていうか、先生。たまには顔出してくださいね?」
「ははっ。熱いねぇ。青春だねぇ」

 そう言うと先生は肩の横で手をヒラヒラ揺らしながら行ってしまった。 
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