嘘つきピエロは息をしていない
保先生は、THE適当人間だ。
どうして顧問なんてやってるのってくらい、やる気がない。
他の部に比べ手がかからなさそうだと思って演劇部の顧問を選んだのかもしれないなぁ。
毎日活動していたり、頻繁に試合や遠征があったりする部活だったら、顧問不在じゃ通らない場面も多いだろうから。
「……大会に出たら。いい成績残せると思う」
部室にはトロフィーだって飾ってある。
また栄光を手に入れようとは思わないのだろうか。
なにをするにも、まずは人を集めなきゃ。
そして資金問題も深刻らしい。
会計係の先輩が電卓を叩きながら嘆いていたのを見たことがある。
部員数がギリギリで活動も校内だけに縮小された今、生徒会が管理する部全体の予算は他の部にまわされてしまうらしい。
保先生にもそのあたりを顧問として考えてもらいたくて部室に連れて行こうと試みたことがあるが、『このあと合コンだから』と断られて驚愕した。
演劇部が休日に活動しない理由も顧問不在が大きく関係していると思われるが、それに関しては『あー。土日はデートで忙しい』なんて言ってくる始末。
以来もう保先生に私はなにも期待していなかったりする。
それでも生徒からの人気は高く人望もあるので(適当なのに!)、二年の先輩には保先生が決め手になり入部した者もいるくらいだ。
先生のやる気スイッチを押す方法が見つかればなぁ、と考えてしまうことはある。
「あー! さっき先生に『新入部員と部費』って言えばよかった」
そんな都合のいいプレゼントをひょいと捧げてくれる人ではないけれど。
藁にもすがりたいこの気分。
廃部寸前。
一人でも欠けたら、演劇部はおしまいだ。