キミだけが知らない想い
「ん?どーゆうこと?」理解してなさそうなあっ君とは反対に、複雑そうな顔をする澪華ちゃん。

「…あっ君のこと…好きなんだ?」と澪華ちゃんは言ってきた。

私は隠してもしょうがないと思ったので、正直に頷いて、全てを話すことにする。

「イケメンで、勉強出来て、スポーツも出来る。優しいし、彼女想いのところはまさに理想そのもの。だからあっ君の親友出来ることはスゴく嬉しくって…だから近い距離とかもほんとはドキドキして嬉しいだけで抵抗する気にはなれない」と私が言うと、

「はあぁ?なにそれ…弘夢君のことが好きだって言うから応援してあげようと思って協力してあげてるのに、あっ君のことが好き?ふざけないでよ!」と澪華ちゃんは言う。

「あーなに?じゃあ、さっき誘われたときもほんとは困ってなくてちょっと嬉しかったりした?」とあっ君は澪華ちゃんの言葉への返事はなく、私に言った。

素直に頷く私に、「もうやめてよね!」と澪華ちゃんが割って入ってくる。

「…澪華ちゃん、ごめんね。言えなくて。けどさっきのは本心だよ。ファンクラブのメンバーたちは澪華ちゃんのことを大事にしているあっ君のことが大好きなんだから。だからふたりの関係に何も文句言う人はいないわ。ただ、癒されてるのよ。私も含めてね。あ、たまに優斗が言うように、男女関係なく話す距離が近すぎるのが問題だったりはするけどね」と私は言った。

「…本気?あっ君狙ってるとか絶対ない?言いきれる?」と澪華ちゃんは言ってきた。

「もちろんよ。私はずっとヒロだけを想ってきた。振り向いてほしくて、かまってほしくて、情けないくらい、いっぱい意地悪したりして。私だけを見ていて欲しい。女子にキャーキャー言われてるのは気に入らない。数日に1回は告白されてるのも嫌でしょうがないわよ。でも、毎回断ってるみたいだから、その度にホッとしている自分が情けなくも恥ずかしくもあるのよね」と私が言うと、

「恋愛ってそんなものよ。私だってそうなんだから。あっ君を独り占めしたいのに、あっ君は男女誰にでも優しいし、近づき過ぎるでしょ?引き離したくてしょうがない時たくさんあるもの。私を迎えに着たって私のバイト先に女の子連れてきたりとか…」と澪華ちゃん、

「…あっ君?それは少し酷いんじゃない?」と私が言うと、

「…アイツは…彼氏持ちだぞ?俺の腐れ縁で同志だ」と全面否定しているあっ君。

けど…焦る様子とか一切見せない。

「なんで私に紹介ないのよ?」と澪華ちゃん

「必要か?俺の元カノだったとしても?」とあっ君

「…元カノ…?やっぱりそうなのね!随分親しそうだったもの!もういい」澪華ちゃんはそう言うと、席を立ち、店を出ていってしまった。

あっ君は待てよと言って追いかけて、私は結局、痴話喧嘩に付き合わされて放置されたような置き去りを食らってしまった。

なのでもう一杯コーヒーを追加してゆっくり飲んでから帰ることにした。

けど…一人になると急に心細くなる。

だって外はすでに真っ暗なんだもん。

ゆっくりコーヒーを飲んだ私は一息ついて、席を立つ。

会計しようと伝票を持って行くと、お金は既に支払われていた。しかも、後追加のコーヒーの分まで。

「誰が支払いを?」と私が言うと、「先ほど一緒にいらしたお連れ様の男性が…」と店員さんが言ったので、私はお礼を言って店を出た。

もしかしなくてもあっ君のことよね?

一緒に居た男性なんてあっ君しか居なかったもの。

彼女を追いかける前から既に?だとしたらかなり粋なことをしてくれたわね。

私はLINEを送ってみた。

「あっ君奢ってくれたの?私、放置されたから、一杯コーヒー追加したんだけど」って。

そしたら、

『悪かったな。金額は美穂に気づかれないように払っといた。美穂はもう一杯追加しそうな気がしたからその分もついでにな。謝罪も込めてだ。遅れなくて悪かった』とあっ君から返事がきた。

なんとカッコいい…これは惚れそうになるわな。紳士的で、粋で男前、ほんとに澪華ちゃんが羨ましい。

「ちゃんと仲直りしなよ?」と送ると、

スタンプだけ返ってきた。ちゃんと話し合ってるんだろうと判断した私は既読だけして返事は返さなかった。

改めて辺りを見ると真っ暗で、少し身震いした。

最近は不審者も多いと学校から回覧もあり、一人で帰ることを避けてきた。

いつも、あっ君か、優斗が居てくれたから怖くはなかった。

けど…まるっきりのひとりぼっちなんだと思うと急に怖さが倍増する。

そして一歩を踏み出す勇気が持てなくなる。

私はしばらくその場所でスマホを握りしめていた。
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