キミだけが知らない想い
とある部活の日、休憩の時間に私は壁ドンで1人の男子に迫られていた。

といっても、彼は人と話す距離が近いと有名な男子バスケ部副キャプテンで私のタメであり、唯一親友とも呼べる、

勝島篤人高2だ。(以後、あっくんと呼ぶ)

性格は天然系で穏やかそうに見えるけど、絡むとウザさ全開のこの男‼

けど、美形でスポーツも勉強も出来るので、ファンはとても多い。

実は私も隠れファンの1人だったりする。

そんなあっくんには可愛い彼女がいる。

綾羽根澪華高2だ。陸上部のエースらしい。カフェでバイトをしていて、そのカフェには彼女を見たくてたくさんの男子も集まるとかなんとか。

そんな二人はどこからどう見ても、お似合いの美男美女カップル。

にも関わらず、あっくんは何かと私に絡んでくる。

もちろん副キャプテンとして、バスケ部としての部活の話とかも多いんだけど、他愛ない会話まで、周りがあいつら付き合ってんの?って言っちゃうようなレベルの関係。

「で、何で私今壁ドンされてるの?」と私が聞くと、

そっと耳元に唇を近づけて、

「見られてるから。皆に、特にヒロは俺を睨んでる」と言う。

私はそれだけで顔から火を吹きそうなくらい真っ赤になってしまった。

『くっ、この天然たらしめ!そんなんされたら誰でもドキドキするわ!』

私の心の声である。

見に来ていた女子達からは悲鳴に近い黄色い歓声が飛ぶ。

「で、用件は?」私の声はこの距離じゃないと聞こえないくらい小さな声だった。

「もぅ、照れちゃって…ほんとに可愛いね、美穂は」とはぐらかすように頭を撫でられた。

つまりこれは、弘夢に対する見せつけらしい。

あっくんは私の気持ちを知っててわざとやっている。

「ああ、このあと、空いてない?部活終わりで付き合って欲しいんだけど…」と言われた。

もちろん断る理由なんて無いので「いいよ」と答えた。

あっくんは小さくヨッシャと言うと私から離れていった。

それと同時に私の方に向かってくるのは、優斗と弘夢。

「大丈夫か?」なんて聞いてくる優斗に特に何かをされた訳ではないので、ニコッと笑ってごまかした。

「…先輩、何話してたんですか?」と弘夢は言ってくる。

ここはなんて答えたらいい?と思いながら目を泳がせていると、

「ちょっとね、美穂に相談したいことがあって」とあっくんは言ってくれた。

「ふ~ん?」と意味深に笑う優斗。

弘夢は何も言わなかった。

「あの体制で相談することなんてあるんですか?」と弘夢はあっくんに楯突く。

「あ?文句あるのか?」とあっくんが言うと、別にと弘夢は言った。

「おい!ヒロ、あんまり楯突くなよ」と優斗が弘夢をなだめた。

部活が無事終わり、帰り支度をする私たち。

優斗がいつも声をかけてくれるんだけど。

私とあっくんは並んで歩きながら、体育館を後にした。

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