BLUE GIRL
ユウは何も言わずに私の涙を拭いてくれた。
黒いハンカチで優しく。
「熱、上がってきたか」
問診にきた看護師さんから体温計を借りた時は、39度だった。
平熱が低い私には少し厄介な数字だ。
おかげで上手く整理がつかず、頭の中はぐしゃぐしゃだ。
ただ、黒髪が少し乱れたジャージ姿のユウを、
誰も水城優矢と気付いていないことに安心していた。
緊急で病院に来ている5組の人々は、自分たちのことで精一杯のようだ。
「先に帰っても良いよ」
「さすがにそこまで薄情じゃねぇな」
「どうしてそんなに優しいの?」
「あ?俺の名前を思い出してみろよ、バカ」
覚えてるよ。
優しい矢と書いて、優矢だったよね。
「あなたにピッタリの名前だね」
「俺はーー、」
ユウがなにかを言いかけた時、看護師さんから名前を呼ばれた。
診察室の前までユウの肩を借りて、中に入る。
ユウが言いかけた言葉を気にしながらーー。