BLUE GIRL
「ありませんよ。別の理由なんて」
「君たちは海が亡くなって2年経とうとしているのに、まだあの子に囚われているね。そもそも【BLUE GIRL】をフィクションとして展開した理由は、海の願いが小説の最後は病気に打ち勝ち生きるラストにして欲しいと願ったためだ。しかし君たちは海の望むラストを受け入れられず、結局、現実と同じラストを描いた。私に言わせればーー【BLUE GIRL】がフィクションであろうとノンフィクションであろうと、構わない。ノンフィクションと公表して海が可哀想と言われようと、あの子は世間の小言など跳ね除ける強い子だよ。公表できない理由は、君とRyoくんにある」
美島さんはカーテンを全開にした。
眩しい光に目がくらむ。
「理子ちゃんとRyoくんが、まだ海の死を受け入れられないからだよね。君たちは海のいない現実に目を背けたいから、【BLUE GIRL】をただの物語だと思い込みたいだけだ。けれど、君たちがいくら望んだところでもう、海は戻ってこない」
穏やかなの美島さんの言葉に歯をくいしばる。
図星だ。
彼の言うことはなにひとつ、間違っていない。
「君は、自由になるべきだ」
「美島さん…」
「ユウくんに話したいのならそうしなさい。これからは海のことは考えず、Ryoくんの顔色を伺わず、君自身で答えを出していくんだ」
美島さんの紡いだ全ての言葉が、胸に突き刺さる。
海が亡くなり、【BLUE GIRL】を執筆することに全てを捧げたその日から、高校を辞めて、友達とは距離を置き、両親さえも遠ざけた。
全ては海のために。
そう思って生きてきた。
それを人は、海に囚われていると言うのかな。
そして自由になる道が、あるのだろうか。