BLUE GIRL
男の自分が側にいては落ち着かないだろうと美島さんは病室を出て行った。
海の父親は、海のように強く思いやりに溢れた人だ。
もしも海の父親が出版社に勤めていなかったら、Ryoがシンガーソングライターでなかったら。
【BLUE GIRL】はここまで人気作品にはならなかっただろう。
偶然が紡いだ物語。
私の大切な物語だからこそ、あなたに聞いて欲しい。
「よ、」
野球帽を目深に被ったユウは私が夕飯を食べ終えた頃にやって来た。
「迷惑かけてごめんね」
「体調はどう?」
「先生も明日は動いて良いって言ってくれた。遅れた分は絶対に取り返すから!だから練習に付き合って」
美島さんに持ってきてもらった台本を掲げる。
「無理せず寝てろよ。悪化するよ」
「今日たくさん寝たから頭が冴えて仕方ないの!お願いします」
「…面倒くさい女だな」
呆れ顔でユウは差し入れであろうイチゴ味のヨーグルトを机の上に置いた。
余計なことはなにも、聞いてこなかった。