BLUE GIRL

撮影から1ヶ月。
もう台本の半分の撮影を終えていた。

京都旅行を終えたら私たちはどんどんシリアスになっていく。

小説には書いていないが京都旅行で初めて海に【BLUE GIRL】を出版して欲しいとお願いされる。

Ryoも私も彼女の言葉をまだ本気に捉えていなかった頃だ。



「おまえ何回言ったら分かるんだ!アクセントがおかしい!」


病院で声を荒げるユウに萎縮しながらも台本と向き合う。

4人部屋であったが誰も出入りせず、気兼ねなく稽古ができた。

しかし会話が漏れることを防ぐために窓を閉めているせいか、暑い。
ユウの額にも汗が滲んでいた。


「ユウ、暑くない?」


「おまえが怒鳴らせるから暑いわ」


「冷たい飲み物買って来ようか?」


「病人が?」


病人だと思っているのであればもう少し優しく稽古をしてくれても良いのでは…?



「いいからさっさとやれよ。俺は帰りたい」


「はいはい、すみませんね」


知ってる。
朝から炎天下の中、撮影が行われていたことを。

撮影が終わったすぐ後に病院に駆けつけてくれたことも。
素直にお礼を口に出しても引かれそうなので、黙っておくけれど。


「ユウ、京都での撮影が落ち着いたら話したいことがあるの」


「ああ」


その内容はおおよそ予想がついているのだろう。
ユウは台本から目を離さずに頷いた。


ユウに打ち明けると言ったらきっとRyoは怒るだろう。私たちの世界に他人が入ることをひどく嫌っているからーー。


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