BLUE GIRL

病院でもう一泊し、薬と点滴のおかげで翌朝は随分と身体が軽くなった。


美島さんが迎えに来てくれて2人で撮影現場は入り、監督を含めたスタッフに頭を下げる。
しかし私が素人かつ未成年であることから周囲の対応は優しく、誰も責めなかった。



「でもいいなあ。ユウさんに病院まで付き添ってもらったのでしょう?」


「はい。たまたまロビーで会って」


木陰で椎名雪乃さんからもらったレモネードを飲む。酸っぱさが暑さと疲労を和らげる効果があるという。


「ユウさんって優しくて素敵ですよねぇ」


これは女子同士の恋バナではない。
明らかにユウに聞こえるように雪乃さんは話している。


立ち振る舞いからも感じ取れるが、雪乃さんは自信家だ。悪い意味ではなく、自分の魅力を素直に受け入れてさらに磨きをかけているように思う。

その点が物怖じせず常に堂々と胸を張っていた海と通じるものがあるのかな。



「私、もう何年もユウさん一筋ですけれど、羅依さんは?」


「え?」


「いつからユウさんのファンですの?」


唐突に振られた質問に、思わずユウのことを見てしまう。


きっと聞こえているだろうが、ユウは椅子に座りスポーツ雑誌に視線を落としいた。


「私も昔から…ユウさんのファンです」


正確には、"海"がファンだった。

海に付き合って出演作品から雑誌のインタビューまで網羅している。
たぶん私は雪乃さんに負けないくらい、芸能人としてのユウを知っているだろう。


「ユウさんの作品は全て見ていると思います」


何気なく発したその一言が、余計だった。


< 107 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop